【イベントレポート】「スポーツ界の#世にも奇妙な不均衡」前編(2020年2月3日)

2月3日に、DAZN CIRCLEにて、Di-Sports(Di-Spo)3回目のトークショーを開催しました。

このトークショーは、アスリートのライフスキルを社会に還元することを目指して活動しているDi-Spoのアクティビティの一環として行っているものです。今回は、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとしたプロジェクト「Ladyknows」とのスペシャルコラボ開催!

Di-Sports Lab長の辻秀一氏とLadyknows代表の辻愛沙子氏の親子によるファシリテーションのもと、「スポーツ界の#世にも奇妙な不均衡」というテーマで、女性×スポーツのあれこれを掘り下げていきました。

前半でLadyknowsやDi-Spoの紹介を行った後、後半はDi-Spoメンバーの女性アスリート5名をゲストに迎えてトークショーを行いました。小堀宗翔氏(ラクロス)、NARUMI氏(ブレイキン)、伊藤華英氏(水泳)、佐藤文机子氏(ライフセービング)、桂葵氏(バスケットボール/3on3)と、バラエティに富んだ5名のゲストの口からは続々と本音が飛び出してきました。

他では聞けない貴重なトークの内容を、前編・中編・後編の3回に分けてレポートしていきます。

左から、小堀宗翔氏、NARUMI氏、伊藤華英氏、佐藤文机子氏、桂葵氏

はじめに

辻秀一氏:今日は皆さん、よろしくお願いします。

辻愛沙子氏:よろしくお願いします。実は親子で表の場に出るのは初めてで、少し緊張しています(笑)

今日、どうして親子でこの場に立つことになったのかというと、私は去年の4月に「Ladyknows」というプロジェクトを立ち上げまして、ジェンダーとか男女の不均衡をテーマに活動しているのですが、スポーツドクターの父と話をしている中で、どうやらアスリートの世界でも男女の不均衡があるらしい、というのを耳にしまして、LadyknowsとDi-Spoがコラボできたら面白いね、という話から今日のイベントに至りました。

今日はかなり豪華なアスリートの皆様がいらっしゃっているので、後ほどアスリートの皆様にもお話を伺っていきたいと思います。

辻(秀):僕はメンタルトレーニングを専門にしているスポーツドクターなんですけれども、世の中、機嫌の悪い人が多いので、機嫌よく生きることがとても大事だということを、スポーツ界だけでなく社会に発信したいという思いがあり、Di-Spoの活動をしています。もともとは、アスリートたちが会話を通して子どもたちに「機嫌がいいことの価値」を伝える活動がしたいと思い、数人のアスリートに声を掛けたことがきっかけで始まりました。今ではたくさんのアスリートが賛同してくれて、子ども向けの活動以外にこういったトークショーも開催するようになり、今回で3回目のトークショーとなりました。

Ladyknows・arcaについて

辻(愛):ここで少し、仕事の紹介を出来ればと思います。辻のジュニアとして生まれた辻愛沙子なのですが、先ほどお話ししたLaduknowsをはじめ、arcaという会社をやっております。株式会社エードットという広告代理店のグループ会社のひとつで、クリエイティブチームを担っているのがarcaになります。普段は広告を作ったり、タピオカ屋さん作ったり、いろんな事業を作ったり…と、「作る」ということを専門にしている企画屋でございます。

辻愛沙子氏

具体的には、ヒルトンさんのスイーツビュッフェをプロデュースしたり、ハロウィンスイーツの企画をしたり。Tapistaというタピオカ屋さんの立ち上げの際には、店舗の内装や広告キャンペーンを考えるなど、ブランディングを行いました。

また、昨年はヘアケアブランドのミルボンさんの企業広告も作らせていただきました。女子力をテーマにしているんですけど、女子力を英語にした「GIRLS POWER」というメッセージを掲げて金髪とかいろんなヘアスタイルの女性を起用することで、女子力という言葉から連想されるような、おしとやかで3歩下がって…みたいなイメージとは全然違う、もっと強いワンダーウーマンのような新しい女の子の力を伝えました。このときは広告の中で女子力を再定義しましたが、最近はこのように社会文脈にのっとった広告を多く作っています。選挙のときには、タピオカ屋さんで「選挙いったらタピスタ半額」というキャンペーンを実施しました。これは、タピオカ屋さんのターゲットである若い人たちが選挙に興味を持つきっかけになればと思って実施したもので、選挙の「投票済証明書」を見せればタピオカドリンクが半額で飲めるというシンプルな仕組み。Twitterを使って告知をしたところ結構話題になりまして、テレビ等で取り上げていただいたり、タレントの指原莉乃さんがコメントをしてくださったりしました。

キャンペーンの告知ビジュアルのひとつ

私は普段、こういった社会文脈に載せた広告をメインに作ったり、毎週水曜日にNEWS ZEROでコメンテーターをしたりしています。

ここからLadyknowsの紹介をさせてください。Ladyknowsは、女性たちのエンパワメントのプロジェクトであり、ムーブメントです。Ladyknowsを通じて、社会に存在している男女の不均衡をみんなが語り合えるようにしていきたいと思っています。具体的な活動としては、1つ目が、Ladyknows Voiceというものになります。これは何かというと、男女をテーマに、ライターの5歳さんなど色んな人たちが自分を主語にした記事を書いていく場所で、ブログやnoteみたいなもの。セックスレスや男女の不均衡など、いろんなトピックの記事がWebサイト上に載っています。今の世の中の流れとして女性の社会進出がメインになってきていますが、その一方で、じゃあ家庭に入っている人は頑張っていないかというと全然そうではなくて、キャリアを目指す新しい道もあれば、そうじゃない自分らしい道もあると思うんです。とにかく選択肢が増えることが大事だと思うので、いろんな新しい人生を描いていく場所にしたいなと思っています。

Ladyknows Voiceの一例

2つ目は、Webサイト上にLadyknows Dataというページを作っています。Voiceの方は温度感を載せているコラムなのに対して、こちらはインフォグラフィックを使っていろんなデータを提示しているページになります。同じテーマについて話し合うとき、異なるアイデンティティを持っている人同士だとどうしてもぶつかってしまうことがあるので、だからこそ少し客観的になって冷静に見てみましょうという場を作りました。平均初婚年齢とか、賃金格差とか、選択的夫婦別姓とか、様々なデータをWeb上に載せているので、良ければご覧いただければと思います。

その中の一つのグラフが、20代・30代の女性の健康診断の未受診率がとても高いことを示しています。

これ、ここ数年で見ても全然数字が変化していないのですが、それに対して働く女性たちは増えているので、若い女性の婦人病は増えているんですよ。子宮頸がんとか、流産とか。私も含めて若い女性たちは、まだ大丈夫だろう、健康だろうと思ってしまって、自分の健康に対して予防医学をしていこうという意識が低いんです。それに対して何かアクションできないかと考え、昨年10月に「Ladyknows Fes」というイベントを開催しました。

今の健康診断は「行きたい場所」というより「行かなきゃいけない場所」になってしまっているので、フェスという形にすることで、少しでも楽しい場所にして、仕組みもアップデートしました。20代の女性は男性に比べて非正規雇用の人が多く、手取りの少ない人もまだまだ多いのが現状なのですが、婦人科検診ってとにかく高くて自己診療で受けようとすると1〜3万円ほどかかるんです。若いから健康だと思っているし、健康診断に1〜3万円も投資できるような状況じゃないから、健康診断に行かない人が多い。じゃあどうにか安く受けられるようにできないか、と考え、広告の手法を使って協賛企業を集めることにしたんです。若い女性たちを応援していきたいと思っている企業さんにLadyknows Fesというイベント自体をマーケティングの場所として提供し、代わりにいただく協賛金で若い女性たちの婦人科検診の費用を捻出する構造にしたので、ワンコイン500円で受けられる婦人科検診が実現したんです。チケットは即日完売でした。仕組みだけでなく中身もアップデートして、美容コンテンツを入れたり、紙芝居をやったり、パーソナルカラーを測れるようにしたり、筋力が測れるパンチングマシンを置いたり…と、楽しい検診を追求しました。ミュージアムやフォトスポットも併設し、上野千鶴子先生などいろんな方にご登壇いただいて、トークイベントも実施しました。

女性向けの広告で一つのメッセージを作っていけたらいいなと思っているのですが、女性向けの広告って結構炎上しやすいので、作り手には高い視点が求められるのです。当事者の女性たちが今どんなことを思い、どんな不均衡に悩んでいるのか、ということに普段から向き合っているチームだからこそ作れる広告というのがあるんじゃないかな、と考えています。今までの広告って、タレントさんが出てきて演出が華やかで…というものが多いのですが、社会問題に切り込んでいく広告表現というものを目指していきたいなと思っている次第です。そのためにも、色んな人たちと対話をしていきたいと思っていて、今日はDi-Spoとのコラボを企画しました。

Di-Sportsについて

辻(秀):僕は、20年も前から心の大切さを世に訴えているドクターなんですが、格差も社会問題も一言でいうと全て脳の仕組みが作っているんです。世の中の現象は人が作っていて、人は脳みそによって動いている。つまり、脳みそが生み出す社会格差や優劣といった現象の中で僕たちは苦しんでいる、と考えています。その解決策の一つとして、Di-Spoの活動を行っています。

Di-Spoでは、3つのValue、対話の価値・ごきげんの価値・スポーツ(アスリート)の価値を社会に提供していきたいと思っています。人間の脳は対話でできているので、質の良い対話が大事ですし、その時ごきげんでいることも大事です。そして僕はスポーツが好きなので、スポーツやアスリートが対話やごきげんの価値を提供することで、アスリートが持っている価値も高めたいと思っているんです。スポーツやアスリートの印象はいかがですか?

辻秀一氏

辻(愛):私は完全に観る専なので、体育の授業では着替えるのも嫌でしたけど、スポーツは大好きです。

辻(秀):やっぱり色々とスポーツに対する意味付けも起こっているんですよね。スポーツといえば気合と根性、脳みそ筋肉、っていうイメージを打破したいんですが。

辻(愛):気合と根性感あります。

辻(秀):Di-Spoの活動では、アスリートと一緒に学校に行って、子どもたちに機嫌のいいことの価値を体験させる「ごきげん授業」をやっています。実際に機嫌がよくなることを体験すると脳の中の海馬に記憶され、その後の人生に大きな影響を与えると考えているので、小中学生を対象に始めました。いずれは年間1000回くらいはやりたいなと思っています。

また、アスリートたちが競技を超えて交流しながら勉強する勉強交流会も開催しています。心の会話に興味のある上質な発想を持ったアスリートたちが集まる場で、今のところ、日本代表かプロアスリートに限定しています。

そして、今回のようなトークショーも開催しています。アスリートの魅力や価値を大人たちに提供していくトークショーで、今回が3回目になります。

1回目は、理事のメンバーと。2回目は、オリンピアンのDi-Spoメンバーと。そして今回3回目は、Ladyknowsとのコラボということで、Di-Spoの女性メンバーをゲストに迎えて行います。

辻(愛):もともとこれをやろうと思ったきっかけとして、国連が出しているジェンダーギャップ指数(男女の格差を表す指数)というものがありまして。昨年末に2019年のジェンダーギャップ指数の世界ランキングが発表されたのですが、153カ国中、日本は121位だったんです。普段生活している中では、「そんなに?」って思うんですけど、政治・経済・教育・健康という軸で評価されたときに、実は日本って見えないところで不均衡が生じている国なのです。たとえば政治の現場を見てみると、政治家のほとんどが男性ですし、子育てをしたり、国会に赤ちゃんを連れてきたりするだけでニュースになったりする国なのです。そういった表面化されていない不均衡はスポーツ界にもあるんじゃないか?と思い、今日はアスリートの方々のお話を聞きたいなと思っています。

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前編では、辻愛沙子氏と辻秀一氏の活動について紹介しました。この後、いよいよDi-Spoメンバー5名をゲストに迎えてディスカッションしていきます。