【イベントレポート】「スポーツ界の#世にも奇妙な不均衡」中編(2020年2月3日)

2月3日にDAZN CIRCLEで開催された、Di-Sports(Di-Spo)3回目のトークショー。

女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとしたプロジェクト「Ladyknows」とのコラボ開催となった今回のトークショーの内容を、3編にわたってレポートしています。

前編では、今回ファシリテーターを務めた辻秀一氏と辻愛沙子氏によるDi-SpoとLadyknowsの活動を紹介しました。中編では、Di-Spoの女性アスリートが感じる#世にも奇妙な不均衡に迫ります。今回ゲストとして迎えたのは、小堀宗翔氏(ラクロス)、NARUMI氏(ブレイキン)、伊藤華英氏(水泳)、佐藤文机子氏(ライフセービング)、桂葵氏(バスケットボール/3on3)と、バラエティに富んだ5名の女性アスリートたち。彼女たちが競技の世界で感じてきたことをありのままに伝えてもらいました。

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ゲストの紹介

辻(秀):それでは、アスリートの登場です!拍手でお願いします。今回の趣旨に賛同して来てくれた、Di-Spoメンバーのトップアスリートたちです。簡単に自己紹介をお願いします。

小堀宗翔氏:皆さんこんばんは。ラクロスという競技をやっている、小堀宗翔と申します。よろしくお願いいたします。ラクロスはプロではないので、平日は仕事をしながら、土日にチームで集まって活動をしています。元日本代表で、2013年にワールドカップに出場しました。

辻(秀):仕事は何をしているんですか?

小堀:仕事は、茶道の教授をしています。

NARUMI氏:ブレイクダンスをやっている、NARUMIと申します。あんまりみなさんブレイクダンスについて耳に馴染みがないかなと思うんですけれども、パリオリンピックから正式種目になることが決まって、スポーツとしても少しずつ浸透してきている、ストリートカルチャーです。日本代表として、現役でやらせていただいております。よろしくお願いいたします。

辻(秀):世界大会何回優勝してるの?

NARUMI:大なり小なりあるのですが、40回くらいです。

伊藤華英氏:元競泳選手で、北京オリンピックとロンドンオリンピックに出場しました、伊藤華英です。今はスポーツの普及活動など、いろんなところで働いております。2ヶ月前に出産しました。

辻(秀):今日の5人の中だと、唯一のオリンピアンです。

佐藤文机子氏:こんばんは。ライフセービングの佐藤文机子と申します。ライフセービングってあんまり知らない方も多いと思うんですけれども、夏にプールや海辺で黄色と赤のユニフォームを着て活動している人をライフセーバーと呼び、そのレスキューの能力を高めるための手段としてライフセービングという競技があります。元日本代表で、プロの選手としてやっていました。出産後、日本代表の育成に関わるようになり、日本代表のコーチ、2018年には日本代表監督を務めました。

辻(秀):日本で何回優勝したの?

佐藤:現役のときは、12回くらい。

桂葵氏:桂葵と申します。私は実はバスケットボールの学生日本一になったところで一旦競技のキャリアに終止符を打って、三菱商事に就職をして今なお働いています。ただ、3人制バスケットが東京オリンピックから正式種目になりまして、それが決まったタイミングで選手として復帰をしました。サラリーマンと両立しながらオリンピックに出られたら面白いなと思って一年半くらいやって、日本代表候補まで行ったんですけど、ちょっと難しそうな状況です。

辻(秀):働きながらオリンピックって、素晴らしいキャリアですけどね。ということで、ここからはこのメンバーでやっていきたいと思います。

女性アスリートとして感じる男女の不均衡

辻(愛):今日は、アスリートのみなさんにいくつか質問をしていきたいと思います。まず1つ目。普段みなさんが競技をやられている中で、男女の不均衡と言えるような疑問や矛盾を感じることはありますか?たとえば棋士の世界で言えば、女性の騎士をわざわざ「女流棋士」と呼ぶこととか。「女流」って言う意味あります?みたいな。

辻(秀):ちなみに「女流棋士」は囲碁と将棋の世界で使う言葉なんですけど、実は囲碁も将棋もスポーツで、海外ではマインドスポーツとかブレインスポーツと言われているんです。囲碁は男女の力の差がほとんどないのに対して、将棋は差があるから制度自体を分けているんです。なぜ差が出ているのかは解明されてないのですが。

小堀:私がやっているラクロスという競技は、男子と女子でルールが全然違うのですが、女子ラクロスのほうが知られていて、むしろ「え、男子もラクロスやるの?」と言われることが多いので、女子のほうがメジャーなのかなと思っていたんです。でも、2028年のオリンピック競技になることを目指している中で、男子と女子のルールが同じでないといけないという条件がありまして、今女子のルールの男子化が進められているんです。もう大きく変わってしまって、今までやってきたラクロスとオリンピックのラクロスでは、目指すところも変わってしまうな、と思いますね。

辻(愛):どんなルールの違いがあるんですか?

辻(秀):まるで違うスポーツ。男子は防具を着けていて、アメリカンフットボールみたいにバンバンぶつけ合っていいけど、女子はミニスカートのイメージで…

小堀:はい。女子の場合はサッカーのような感じですね。

辻(愛):日本では女子ラクロスのほうが有名だけれど、女子のルールに統一することにはならなかったんですね。

小堀:ならなさそうですね、今のところ。世界的には男子のほうが有名で、アメリカには男子のプロリーグがあります。

NARUMI:ブレイキンは、男女混合が多いですね。私が始めたときは男女が分かれていなかったから、それが楽しかったんですよ。自分は一応女の子なので筋力的には男の人に敵わないけど、あほなので、「やればできる、やればできる」みたいな感じで。

辻(秀):修造みたい(笑)

NARUMI:それに限界がないところが面白かったですね。ただ、最近は単純に女性の選手が増えてきたのと、女性だけでそれなりにレベルの高い大会が開けるようになったので、大会によっては男女別になってきているんですが、男性はメインフロアでやって、女性はサブフロア、みたいなことも結構あるんです。私はずっと、女性の方がレベル低いからしょうがないかなと思ってて、頑張ってうまくなってメインフロアで踊れるようになるんや!と思ってやってます。

辻(秀):一緒にやっていて男女のレベルの差はあるの?

NARUMI:男性は力技系が強くて、女性はしなやかさを活かすのが上手い、といった特性の違いはありますが、結局男も女も関係なく、クリエイティビティが高いと通用するって感じですかね。

 

辻(秀):いいね!それいいね!さすがブレイキンって感じだね〜。

辻(愛):超フラットな感じ。女性のプレイヤーも増えてきているんですね。

NARUMI:増えてきてますね。あと年齢層が下がってきてます。私が見ている子の中では、4歳とか5歳くらいで始めてる子もいるんですけど、そのくらいの年齢だと、テンション高い日はやるけどテンション低い日は何もやらない、みたいな感じです。早い人は、そのくらいの年齢で始めて、もう10歳くらいから海外の大会に出たりしてます。

辻(秀):パリオリンピックに出たら、もっと競技人口増えるよね。

NARUMI:増えると思います。やっぱり現状は一般の人に見てもらえていないし、優勝しても誰も知らないという状況なので、オリンピック競技になれば広がるのかなと思います。

辻(秀):はなえちゃんはどうですか?

伊藤:競泳は基本的に男女一緒に練習していて、1本だと男性の方が早いんですけど、何十本もやると最後は女子が勝てるんです。男性の方が瞬発力や力があるけど、女性は1本目から30本目までマネジメントしながら続ける能力があるというか。コーチの掛け声が男性と女性で違うんですよね。

私が15,16歳で日本代表に選出されていた時は、「美人スイマー」とか「女子高生スイマー」とか言われて、それだけでニュースになって、取材が来て。日本一になってないのに、日本一の人より取材が来るんだろうと思って、当時は競技力とメディア量の差に悩んでいました。

辻(愛):近しい悩みがございます。

辻(秀):女子の場合は枕詞がつくんですね。

伊藤:もっと実力で評価されたいというところがありました。35歳の今ならそういうことも言える気がするんですけど、15,16歳の頃は言えなかったので、悩みでしたね。

辻(愛):私も大学在学中に仕事を始めたので、よく「女子大生なのにクリエイティブディレクター」とか言われることが多くて、「なのに」って何?クリエイティブディレクターと女子大生って逆説でしたっけ?みたいな不思議な感覚になることがあるので、気持ちがわかります。

伊藤:メディアの方も自分のビジネスのためにキャッチーに呼びたがるのは分かるのですが、言われている立場からすると、「うーん」って思いますね。

佐藤:私が学生の頃、ライフセービングは、夏のパトロールの監視塔に登れるのは男性だけでした。

一同:え〜

佐藤:理由は、男性の方が強いから。私は競泳上がりで、先輩の男性より泳ぐの速いのに…と心の中では思っていたのですが、当たり前の流れに従って、私はビーチで起きることを見ていました。でも最近だんだん女性でも対等にやれる人がたくさんいるよね、という考え方に変わってきて、今は女性も監視塔に登るし、監視長にもなっています。あと競技面で言うと、今は男性も女性も世界大会の種目が同じですが、私が現役のときは女性の方が出られる種目が少なかったんです。最近まで、日本選手権も男性の方が優位でした。個人種目は男女同じ種目があるのに、チーム種目はチームで1個しか出られない種目もあって、当然男性の方が力が強いので、男性だけで出ていたんですよね。これが当たり前の状況だったので、運営側におかしいって訴えたんですが、時間がないから変えることはできないって言われたんです。時間がないからって女性が入れる可能性を下げることになんとも思わないんですか?って言ったんですが、通じないんですよ。それで私が本部長に就任して運営できるようになった時に全部変えて、男女一緒になるようにしました。

 

辻(秀):水泳は全部同じ?男女の競技数。男性だけの競技はないの?

伊藤:オリンピックだと、長距離の一番長い距離は男女で違いますね。男性は1500mで、女性は800mです。世界選手権だと女性の1500mもありますが。

辻(秀):シンクロは女性しかない?

伊藤:世界選手権とか、たまに男性もあります。

辻(愛):スポーツだと、筋力の差や体力差に加えて、そもそも競技人口っていうところが別の問題として出てくるから一概に言えないのかなと思いつつ、実際プレイヤーとしてやっていらっしゃる方からしたら、競技人口が少ないから女性は出てくるなと言われたら「は?」ってなりますよね。

佐藤:それってすごい人種差別ですよね、って何度も言いかけたんですけどやっぱり言えなくて。でも自分が運営側に回ったときに言いました。それは、女性に対する差別ですよ、って。そしたらみんなが黙っちゃって…

辻(愛):かっこいい〜。

佐藤:私は競技を引退してからコーチとしてスタッフ側にいますが、周りは圧倒的に男性が多いです。

辻(秀):どの協会もみんな男性が仕切ってるんですよ。

佐藤:私も、自分の所属する団体で初めて女性の監督になったんです。さっき、「女性」とか「女流」とか、女性だとなんで枕詞がつくんだろうという話がありましたが、私は逆にそれを利用して、「女性で初めて監督になったんです」と使っちゃっている部分はあるんですけど、それくらい女性が組織の中で上にいるのはすごく難しいことだなと感じていました。

辻(愛):こうやって一歩目を開拓してきた人がいるから次に続ける人たちがいるんだろうなぁと。

辻(秀):バスケットはどうですか?

桂:私は、バスケのハーフコートを使って3人対3人でやる3人制のバスケをやっています。3人制のバスケは2007年に世界共通ルールができて、2017年に東京オリンピックから正式種目になることが決まった新しい競技で、オリンピックに決まった時のキャッチコピーは、“From the street to the Olympic”、「ストリートから世界へ。」でした。まさにルーツはストリートにあって、世界各国のローカルルールでやられていたものをFIFAが面白いじゃんと言って競技化したんです。正式名称は3X3ですが、よく耳にする3on3とほとんど一緒です。

基本的にストリートボーラーって男性なので、3X3がオリンピックの正式種目に決まったからといって急に女性のストリートボーラーが生まれることはなく、まさに3X3でも男女の違いはあります。世界各国のクラブチーム単位で参戦できるワールドツアーというのがあって、男性の場合はクラブチーム単位で予選を戦って勝ち抜いたチームが参加できるんですが、女性の場合は世界中で3X3をやっている国が少なすぎてクラブチーム単位だと集まらないので、ナショナルフェデレーション(協会)を通してチームを派遣することになっているんです。協会に認めてもらって派遣されるためには、協会が決めたステップにのっとって日本代表になる必要があり、なかなか世界と戦えないのでとてももどかしいです。

辻(愛):クラブチームごとじゃないとすると、完全に個人単位で選ばれることになるんですか?

桂:そうですね、完全に個人です。

辻(愛):この人とこの人とだったら私の個性が生きる、といったことができないってことですね。

桂:そうですね、そういうことになりますね。

辻(秀):日本国内に、女子のリーグはあるの?

桂:あります。この前日本一になりました。でも、そのリーグから代表選考に入っているのは私含めて3人しかいなかったです。他の人はみんな5人制のトップリーグの選手たち。確かにうまいから全然いいんですが、私たち3人制の選手にとって、世界と戦うチャンスがないと、頂点が引き上がらないのではないかと思います。

 

女性アスリートならではの悩み

辻(愛):自分の競技に限らず、ずっとスポーツをやられているみなさんにとって、女性ならではの悩みって何かありますか?たとえば、私が聞いたことのある話だと、格闘技界は女性らしさを出してはいけない、という暗黙の了解があって、体脂肪率を落とせば落とすほど良いという文化があるらしいのですが、体脂肪が落ちると生理が来なくなってしまうので、これが女性格闘技界の中で問題になっているそうなんです。そういった、ルールとは別の精神論みたいなところで、女性ならではの悩みがあれば教えてください。

辻(秀):ちなみに、体脂肪率が15%を切ると月経不順の率が増えて、10%を切ると無月経の率が増えるんですよ。女性ホルモンが骨を守ってくれているのですが、体脂肪率が下がると皮下脂肪から出る女性ホルモンの量が減るので、骨粗しょう症のリスクも増えるんです。昔、医者の頃はこれを研究していました。女性アスリートの三症は、無月経と摂食障害と骨粗しょう症と言われています。実は、無月経になっても骨粗しょう症になる傾向があるスポーツ種目と、そうじゃない種目があって、格闘技は無月経になっても骨粗しょう症にはなりにくい。インパクトがあって筋肉の量が多いので、骨を荷重で守れるんですね。一番無月経で骨粗しょう症になりやすいのは、長距離ランナーです。

小堀:生理の話でいうと、もちろん身体的に負荷になることもたくさんあるんですけれども、やっぱり生理が来た時の心の不安定感が一番の問題かな、と思っています。チームの仲間で心の不安定な人がいるときにかける言葉も困りますし、自分自身も生理が来て心が不安定なときは、朝起きて「あー寒いなぁ」とか、「雨降ってるから練習に着替えいっぱい持っていかないといけなくて最悪だなぁ」とかいろんなこと考えながらチームに合流しちゃって。そうすると、チームメイトに会ったときも「今日は雨が降ってて最悪だよね」「寒いから早くシャワー浴びたいよね」みたいな会話から始まって、フィールドに出たときもいつものようにコミュニケーションが通らなくなって、心が通わなくなって、ボールが取りづらくなって、練習が非効率になる…という悪循環に陥ってしまっていたんです。大学生の頃から。でも、だからこそ今は自分の心がすごく大切だなと思って、心が不安定になりがちな時こそ、そういったことに囚われずに、私は今なぜここにいて、何をしなければいけないのか、ということにフォーカスするようになりました。やるべきことに集中しよう、という気持ちに切り替えることができるようになったのは、女性として学びになったことの一つかなと思います。

辻(秀):いい話だな。

ちなみに、また医学的・心理学的な話をすると、寝不足でパフォーマンスが落ちるというのは医学的にはあまり証明されていないんです。寝てないと思い込んでいることがパフォーマンスを落とす。だから、うまくいかないことを「あー寝てないからだ」と思うことがパフォーマンスを落とすことに繋がってしまう。実は生理に関しても、生理がパフォーマンスをガタ落ちさせるという証明は医学的にはあまりないんです。影響は受けると言われているけれども、「生理だから」と思うことは、やはり心理学的にはマイナスな要件になってしまいます。だから、機嫌に囚われずにいることは、どんな状況においても伝家の宝刀になるんです。

NARUMI:私の場合、男性も女性も一緒のグループで練習しているのですが、今日生理ですとか言えちゃうんです。知ってもらえないと分からへんから、言う人なんです。生理ですと言ったときに変な空気になることもあるけど、私はチームの人がみんなわかってくれているから、生理がきつい時は「めっちゃしんどいわ」とか言うんです。やっぱり他の女性も生理のときはヒステリックやし様子おかしいんですよね。でも、こういう話をした時に、男の人でも生理あるって言われたんです。女の人みたいに身体的なものではなく、心の問題で、一ヶ月に一回くらい気分的に落ちるときがあるって。

辻(秀):ほんと?

辻(愛):ホルモンバランスの関係でメモをつけると、毎月同じくらいのタイミングでイライラが来ている、みたいなことは聞きます。

NARUMI:それのことかな。そういう話を聞くたびに、もっとオープンになれる環境があればいいのに、と思います。日本人だからなのか、言わなくても気づいて欲しい、という感じがしていて。でも察するなんて無理に決まってる。スポーツだけじゃなくて社会的に、自分のことをオープンにするのは悪いことじゃない、という空気になればいいのに、と思います。

一同:いい話。

辻(愛):ジェンダー的な話では、ピルを福利厚生に取り入れた企業がニュースになっていて、うちの会社でもそれを導入しようか、という話が出ています。Ladyknowsのチームって半分男性なんですが、普段から生理のこととかも取り上げたりしているので、ピルの仕組みも一緒に話し合ったりしているんです。ピルって婦人科に行って処方してもらうんですけれども、飲み始めた曜日からシールを貼っていくカレンダーがあって、がさつな私でも飲めるので、普段サプリを作っているチームに共有して男性にもこのアイディアを活かしてもらったりとかして。あと、10月のイベントの時に生理用品の羽について男性たちに説明したのですが、意外とこういうのって男性が自分で買って研究するのもハードルが高いので、カジュアルに話せる機会があると、それこそ父親やパートナーに生理用品を買ってきてもらったりとかもしやすくなるのかな、と思ったりしています。私は父が医者なので普通に言いますけども。

辻(秀):日本って、医療やお医者さんが一般の人たちからすると遠いよね。

辻(愛):産婦人科という名前が遠い。

辻(秀):お医者さんというのはやっぱり白衣を着て病院の中にいるイメージだから、医者が格差を作っているのでは、と僕なんかは思うけどね。友達にいたら普通にしゃべれるから便利だけど。

辻(愛):女子中学生とか女子高生がピルもらいに産婦人科行くってなるとハードルが高くなって、お父さんに「風邪っぽいからちょっと病院行ってくる」とは言えても「ピルもらいに産婦人科行ってくる」とは言いにくかったり。私は最近こういう仕事をしているから行くんですけれども、受付にいらっしゃる方を見ると年齢がまちまちで、社会の流れも変わってきているのかなとも思いますが。

辻(秀):水泳はどうですか?

伊藤:私も現役時代に生理がオリンピックにあたってしまったことがあるんですね。その時、ピルの知識がほぼゼロで、今のような低用量ピルではなく違うピルを飲んだのですが、すごい副作用が出て、ニキビと体重が3キロ増えちゃいました。そしたらコーチに「なんでこんな太ってんだよ」って怒られてしまったんですが、男性の指導者の方にも女性の体を勉強していただくことは大事だなと思って。女性の体を知った上で、選手にどう声を掛けていくか、ということになると思うので。コーチに怒られたりしたら、「オリンピックに生理にならなければもっと良かったのにな」とか思っちゃうわけじゃないですか。自分自身が無知だったなというのもありますけど。

10代の頃、ドイツで育った友達に、なんでピル飲んでないの?って言われたんですが、当時は、ピルって何?避妊するためのものじゃないの?と思ってたんです。日本では、ピル飲んでるって言ったら破天荒な女子なのかなと思われるから。でもヨーロッパとかでは、初潮からちゃんと3回生理がきたらピルは誰でも飲めます、と婦人科の先生が言ってくれるんですね。私も引退後に6年間ピルを飲んだのですが、すごく体の調子が良かったです。子宮内膜症といった病気のリスクも減らせますし。

 

アスリートって体のギリギリのところをトレーニングしていくから、やっぱりコーチや指導者には体のことを知っていて欲しいし、その上で練習プログラムを組んでもらえたらな、と思います。あと、私ずっとメンタル弱いからダメだって言われていたので、メンタルの弱さだけじゃなかったっていうことに悔しさを感じていますね。

辻(秀):自然現象だからね、ある意味ね。

伊藤:それが全部婦人科で解決できるっていうことを引退してから知ったので、もっと気軽に、カジュアルに婦人科に行けていたらな、って思ったんです。

辻(秀):女性自身もLadyknowsしてないよね。

辻(愛):それって、女性自身が知らないのも一つの課題だし、社会全体で、ピルを飲んでる女子=破天荒な女子、みたいな意味が付けられてしまっていることも課題ですよね。教育の問題もありますけど。アスリートが筋肉の仕組みを知ったり、栄養バランスを考えながら食事を摂ったりするのと同じで、ちゃんと知っていけるといいのに。

辻(秀):人間の仕組みだからね。僕の一番の訴えとしては、脳と心の仕組みをもっと知って欲しいなと思いますけどね。脳と心の仕組みを知らないから、自分自身をマネジメントできなくて鬱になる人がいるし、人間同士の戦いも起こるし。脳と心の仕組みを学ぶ機会があればいいのに、メンタルトレーニングを受けないとないでしょ。

辻(愛):予防医療が浸透してないですよね。医療はマイナスになってから必要なものだと思われているから、鬱になってから病院に行ったりとか。

辻(秀):治療の領域が強すぎるよね。Ladyknowsじゃないですけど…僕も作りたかった、Brainknows(笑)

辻(愛):パクられた(笑)

佐藤:ライフセービングの遠征は男女一緒にいることが多いのですが、その時に男と女って基本的に違う生き物なんだなぁと感じることが多かったです。世界大会で戦うレベルになると、ギリギリのところまで自分の体を磨き上げていくので、ホルモンのバランスが悪くなったり、遠征先で環境の変化からストレスを感じたりして、生理の周期がずれちゃうこともありました。また、女性は便秘になりやすいから、普段は食事の時間帯をなるべく決めて、野菜や水分を多めに摂るようにしていたのですが、遠征に行くとみんながいるので崩さざるを得なくなってしまうんですよね。遠征先で、夜お店が全部閉まっちゃって、マックに行かなきゃいけないようなこともあったんです。いつものようにバランス良く栄養を摂りたいと思っても、そういうことは周りからわがままだと捉えられているんだろうなと思うと、まわりに言えなくて、チームで行動をするときは自分の中で勝手に不満やストレスを溜め込んでしまっていました。

だから、私がスタッフとして遠征に帯同するようになってからは、なるべく女性に寄り添った食事や生活を気にかけるようにしています。それでも女性のスタッフは少なかったし、なかなか手が行き届かないところが正直ありましたが。

辻(秀):ライフセービングの男性のレベルが低いように感じるけどなぁ。だって、世界大会に行ったら、僕の知っている男性アスリートは食事もすごく気にしてるぜ?男性が無頓着で、女性がセンシティブっていうのは僕の中ではピンとこないなぁ。

佐藤:男性にも、こだわっている選手はもちろんいます。ただ、便秘や生理など、女性の方がストレートに体に現れやすいと感じていました。

 

辻(愛):男性がほとんどを占める政治の世界でも、どうしても子どもを連れて行かなきゃいけない女性がわがままだと捉えられてしまっている事例がありますよね。女性の問題ではないのに。あと、生理の2日目に企業の新入社員研修に出席した女性が、途中でお手洗いに行けず、経血が漏れてしまったこともニュースで取り上げられていました。2日目ってすごく経血の量が多くて、頻繁に生理用品を変えないといけないのですが、同調圧力でどうしてもお手洗いに立てなかった。男性が多い環境だとルールメーカーは男性になってしまうので、別に男性側も言わせない環境を作ろうとしていたわけじゃなくても、無自覚な圧力になってしまっていることってありますよね。

辻(秀):それはやっぱり、知らないことによる現象なんですよ。

辻(愛):女の人が言わないといけないけど、男性側も知る努力をしなきゃいけない。

辻(秀):おじさんが毎日どれほど疲れるか知らないでしょ?

辻(愛):知らない。

辻(秀):誰も他人にはなれないけど、やっぱり知り合うのが大事なんだね。

辻(愛):対話ですね。女性の問題・男性の問題って括らないことですね。

桂:私の場合、みなさんとはちょっと違う悩みなのですが、女の子らしくいたかった、というのがすごくあります。バスケなんでみんな服もダボダボで、私服も男物だったりして。

辻(秀):髪の毛も短くない?女バスの子。

桂:短いです。私はギリギリ伸ばして、戦ってました。部活に行くとき、スカートを履いて行ったり、ハートとかファーがついた服を着て行ったりすると、まわりから「きもっ!」とか「女子じゃん」とか言われたんです。ただ、母は「いいじゃん、かわいいよ」「おしゃれだよ」と言ってくれたので、私はかわいい格好したいんだからかわいい格好しとこ、と思ってましたけどね。

辻(愛):自分らしさですね。

辻(秀):みんなそれぞれで良いのに、枠組みを作りたがるからね。

辻(愛):それ結構本質的な問題な気がしますよね。

桂:だから、私は今3人制のバスケをやってるんですけれども、ネイルもしているし、試合会場にはめちゃくちゃオシャレして行きます。絶対にジャージで行かない。

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中編では、今回のメインテーマに迫るトークが繰り広げられました。後編では、彼女たちがアスリートとして不均衡に打ち勝ってきた方法についてレポートしていきます。