藤原里華 (フジワラ リカ)

テニス

プロフィール

6歳でテニスを始め高校3年時プロ転向後、キャリア20年中11年間日本代表(杉山愛さんの12年に次ぐ歴代2位)。2002年四大大会ダブルスで全豪ベスト8、全仏ベスト4、年間最終戦WTAツアーファイナルベスト4(P:杉山愛)。2012年WTAツアー初優勝(P:伊達公子)。シングルス・ダブルス全ての四大大会本戦に出場、全日本選手権単複計6度優勝。20年間のプロキャリアから2020年3月引退。
自己最高世界ランキング シングルス84位 ダブルス13位

<好きな食べ物>

1.ほうれん草カレー

2.デニッシュ

3.スンドゥブ

<ご機嫌の価値>

1.心身の健康を維持しハイパフォーマンスを発揮し続けられる

2.周りの人をハッピーにできる!

3.夢を諦めないでチャレンジできる

<関連情報>

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インタビュー

辻先生)今日はテニスの藤原里華さんのインタビューをさせてもらいたいと思います。よろしくお願いします。

藤原さん)よろしくお願いします。

辻先生)まず、総じてテニスの魅力と、あなたが特化してやっていたダブルスの魅力、この2つを教えてもらえますか?

藤原さん)まず私がテニスを始めた時に感じた魅力が、打球感ですね。ボールをラケットで打つという単純なことなんですけども、テニスって(ラケットに)ストリング(糸)が張ってあって、そこにボールが当たるっていう感覚で。私が小さい頃には、壁打ちをして、打ち付けたボールが返ってくる、また打ったら返ってくる…っていうのが単純にすごく楽しかったんですね。

辻先生)なるほどなるほど。

藤原さん)それを延々とやっているような子供で。母親がテニスコーチでもあったので、近所の仲良しの友達を集めて週1回のテニスレッスンを始めてくれて、そこで大好きなお友達と自分の好きなテニスができるのが楽しくて。ソーシャルスポーツなんて言いますけど、みんなで集まって、友達と切磋琢磨しながらできる。また、テニスは対戦相手がいて初めて成り立つので、これはプロになっても感じましたけど、相手がうまければうまいほど自分を上達させてくれて、成長させてくれる、奥深いスポーツなんです。ただボールを打つだけ、決めるだけじゃなく、相手と会話をしているようなやりとりの中で、駆け引きしたり、自分と向き合ったりさせられる、そんな面白さがあります。

辻先生)バスケも仲間がいるし、相手との駆け引きもあるし、自分のチームとの阿吽の呼吸みたいなものもあって、めちゃくちゃ面白いスポーツなんだけど、テニスはどう違うの?

藤原さん)テニスは、シングルスで言えば、それが自分1人で完結するっていうところに面白さがあるなと思いまして。

辻先生)卓球じゃだめですか。

藤原さん)卓球でもそれはできますけど、私の中では、テニスは卓球よりハードで、動かなきゃいけない場所が広い。マラソンやボクシングや野球やサッカーのように、短距離から長距離までの運動量があって、フィジカル的にすごくハードなんです。そういった中で、上に行けば行くほど限界を求められる、フィジカル的にもメンタル的にも究極を求められるスポーツじゃないかなと思っていて。

辻先生)なるほど。シングルスとダブルスはどう違うんですか。

藤原さん)ダブルスだとパートナーがいるので、自分がやろうとしていることをパートナーと一緒にプランニングして協力できる。そして選手によってプレースタイルがありまして、サービスが得意な選手、攻撃が得意な選手、守りが得意な選手っていろいろいる中で、得意不得意が補い合えるところがあって。あとは、パートナーがいるからこそ、バレーボールやバスケでいう速攻プレイみたいな、時間を操るプレイができたりします。パートナーを生かして相手が見えないところから攻撃してもらう、みたいな作戦をシェアしたり、もちろん感動も分かち合えたり、ダブルスだとそういうチームプレーの要素がありますね。あとは、2人とも調子いいですっていうのは稀なので、パートナーがやる気になる声掛けをするなど、マネジメント力みたいな能力も養われますね、ダブルスは。そういったことができないと、やっぱりその子と組みたいとは思われないし。

辻先生)あぁそうですね。

藤原さん)そういった意味で、ダブルスは難しさもありますけど、私はそこが結構楽しくて。やっぱり、喜びや、チャレンジングなシーンもシェアできるっていうのが、楽しかったですね。

辻先生)なるほど。ラグビーの選手に言わせると、廣瀬とか大野くんは、それを15人でやるからものすっげー感動があるらしいよ。

藤原さん)あー、それはすごいですね。ノーサイドゲームとか見てても、もし自分に息子がいたらラグビーだなぁって思いますもんね。やっぱり大勢をコントロール・マネジメントするからこその難しさがある反面、感動も何倍にもなるのかなっていうのは思いますね。

辻先生)小さい頃はどんな少女だったんですか?里華さんは。

藤原さん)もちろん友達と遊んだりも好きだったんですけど、コツコツとボールで遊んだりとか、階段の踊り場から飛び降りることを延々と楽しんだりとか、次はもう1段上から飛び降りてみたりとか、体動かして、こうやったらもうちょっとうまくできるかなとか、繰り返しトライするような子でした。公園の遊具でも、たとえばブランコからもうちょっと遠くに飛び降りてみようとか。

辻先生)向上心あるね。

藤原さん)ありましたね。どうやったら空飛べるんだろうとか。

辻先生)負けず嫌いではなかったの?

藤原さん)負けず嫌いだったのかなぁ。でも、負けず嫌いはどちらかっていうと後天的に鍛えられましたね。もともとは、人と争うことよりも、走るのが気持ちいいとかを感じるタイプでした。だから、保育園の運動会でも靴にこだわったりとか。

辻先生)へぇ、かわいい。

藤原さん)どうやったら速く走れるかとか、どうやったら自分のパフォーマンスが上がるか、みたいなことを1人で考えてました。

辻先生)お母様はテニスのコーチだったんでしょうけど、娘に対してはどんな感じだったの?

藤原さん)両親ともテニスに出会ったのが高校からだったので、プロになるには少し遅めで、2人ともインカレのレベルにはいったんですけど、プロになる人たちとはレベルが違って、やっぱり無意識にできることが少なくて。もし自分の子供がテニスをやりたいってなったら、早めに本格的にやらせてあげたいなって思ってたらしくて、6歳の時にテニスに夢中になっている私に聞いてくれたんですよね。「里華は、楽しむテニスと、プロになって真剣に頑張るテニス、2つのテニスのどっちがいい?」って。

辻先生)6歳の時に。

藤原さん)はい。

辻先生)うわお。

藤原さん)で、私はプロ1本でこの道を極めたい。これで上達して強くなりたい。プロになりたい。プロがなんぞやって知らないけど、これだけはやりたいって言ったんですね。そしたら、「厳しいけど大丈夫?お友達と遊ぶ時間も大切だけど、プロになるってなったらそうも言ってられないけど大丈夫?」って聞かれたんですね。「全然大丈夫です、プロになりたいです」って感じで答えたので、覚悟してねっていう感じでした。よろしくお願いします、みたいな。迷いがなかったんですね。

なので、親としても、私がプロを目指すことは厳しいけど覚悟を決めてくれて。テニスのコーチをしていたので、自分たちのコーチをする時間以外にも子供に教えなきゃいけなくなるので、早く知っておきたかったみたいで。6歳で宣言をされたので、やっぱり厳しかったです。でも、厳しいことが嫌とは1回も思わなかったです。

辻先生)6歳から厳しい環境で、高校ぐらいまではそれでやりきれてたの?

藤原さん)そうですね。小学校の頃はなかなか県で1番になれなくて、県で1番の子が全国で1番だったんです。それまでの私はおとなしい性格で、勝負に対しての執着心、死んでも負けたくないみたいなのがなかったのですが、強くなってその子に勝つためには、メンタルを変えていかなくちゃいけないよって言われて。単純なんですけど、競馬の馬が走るみたいに、競ったシーンで気持ちが弱くなったらももをパチンと叩きなさいと。そこで頑張らなきゃいけないっていうスイッチを入れなさいと、母に言われて。

辻先生)なるほど。鼓舞するんだね、自分を。

藤原さん)そうですね。で、そうなったら自分で頑張るんだって、単純に足が動き続ける。おとなしくなってくると、体が動かなくなってパフォーマンスが下がってただけだったので、そこでスイッチを入れるっていうことを教えてもらって、それから自分で鼓舞して気合いを入れて。「カモーン」って言ったりとか、そういうメンタルのスイッチを入れるテクニックを習って。あとは、テニスって審判がつかないセルフジャッジっていうルールがあるんですけど、子供だと、相手に自分の都合のいいようにジャッジされたら納得いかなくて、ずるいとか言ってしゅんってなって。でも、結局相手がどうであれ、それは自分に負けているということだから、そういった時にも毅然として、見回っている大人を呼んで抗議するとか、きちんとジャッジをしてくださいってアピールするとか、行動しなさいと。で、もしそれでも変わらないんだったら、絶対に入ってるって言われるところに打って勝ちなさいと。そうやって自分に打ち勝つってことを学んで、そういったところが自分を強くしてくれて、中学校後半くらいには日本一になることができて。

辻先生)わぁ、素晴らしい。

藤原さん)もう6歳の時にプロになるって決めていたので、全国を取れて、あとはいつ世界に行くんだって感じで。で、高2の時に、大人の大会である全日本でベスト4に入って、その時にもうプロになるって決めました。

辻先生)なるほど。今メンタルの話も出てきたけど、大人になってトッププレーヤーとして世界を渡り歩いてた頃は、テニスにおいてどんなメンタルが大事でしたか?

藤原さん)そうですね。やっぱりフローな状態だったりとか、ゾーンって呼ばれる超集中の状態とかが大事でした。私も超集中の状態って何度かあったんですけど、テニスの試合って長いので、どちらかというとフローの状態ですかね。

辻先生)そうだね。

藤原さん)特に、1年間のうちにツアーの期間が10ヵ月ぐらいあって長いので、やっぱりそのフローな状態を保つことが1番強いなと思いましたね。私自身はどちらかというとご機嫌な人間だったんですよね。小学生の頃とか、常に歌を歌っているような。今でも昔からの友達に会えば、ほんとずっと歌ってたよね、みたいに言われる感じです。プロになるタイミングから、結構ストイックなコーチについたんですけど、その人が第一人者みたいな方だったので、その人みたいになりたいって思いすぎて。

辻先生)日本人?

藤原さん)日本人です。自分としては憧れで、世界に行くにはその人みたいにならなければいけないって思いすぎて。かなりご機嫌な状態から正反対にいってしまって、ツアーが楽しくなくなっちゃったんですね。私はレベル関係なく、上手くても下手でも、誰に対しても話しかけて友だちになりたいタイプだったんですが、そのコーチはかなりストイックで、強い人とつるみなさい、と教わって、人を選ぶようになっちゃったんですよ。強い人、ストイックな人、世界に通じている人を選ぶようになって、自分自身の心が苦しくなってしまって…

辻先生)認知的だよね、それ。

藤原さん)そうなんですね。今思えばほんとにそうだったな。で、それでもう自分がわけわかんなくなっちゃって。

辻先生)自分らしくないもんね。里華さんらしくないんだよね。

藤原さん)そうなんです。それで楽しくなくなって。勝つためにこうしなきゃいけない、こうすべきだ、みたいな感じで、めちゃくちゃしんどくて。ある日、アメリカで試合に負けた時に、プロ1年目で17歳だったんですけど、涙が止まらなくなって。

辻先生)あら。

藤原さん)コーチも女性だったんで、部屋をシェアしてもらってたんですけど、そんな弱い自分を見せられないから、試合終わってからお風呂から出られなくて、お風呂で2時間泣いて。でも涙止まんないし1回出ようって思ってお風呂から出て、出ても涙が止まらなくて。さすがに私が限界だっていうのもわかって、コーチにも、「苦しいでしょう、里華ちゃんお母さんと会ったら?」って言われて、「苦しいです、そうします」って。

辻先生)かわいそうに。

藤原さん)帰国して、おかしくなっちゃった私を見た母にどうしたの?って言われて。私ももう強ぶれないし、テニスの遠征なんか行きたくないって言って…。母親も、お金かけてコーチ雇ってくれたので、投資した結果そんな苦しんでる私を見て、「えっ、どうなったの」みたいな感じになったんですけど。「じゃあどうやったらもう一回テニスやりたい、ツアーやりたいって思えるの?」って聞いてくれて、ママとなら回る、みたいな。

辻先生)そう言ったの?

藤原さん)はい、心の叫びが出て。それで、母親とイチからやり直して、アメリカ遠征についてきてくれて。

辻先生)そうなんだ。

藤原さん)私の頭が、「こうじゃなきゃいけない、勝つためにはこうしなきゃいけないんだ」っていう脳になっているのを、母親がちょっとずつこんがらがった糸をほぐしていくような、リハビリの日々が続いて。

辻先生)認知が暴走して、ノンフローの海で溺れてる感じかぁ。

藤原さん)はい。もうあの時は本当に苦しかったですね。“have to,must”、べきべき、みたいな。

辻先生)うわぁ、きつ。

藤原さん)きつくて。とにかく、浮き足立っていて基本ができてないから、基本をじっくり練習しようみたいな感じで、簡単なボールから自信を積み上げる練習をしていて。あとは、私に友達がいないなってことに気づいてくれて、仲良い友だちがいれば楽しいじゃないってなって。ダブルスができると、普段はライバルの子たちでもダブルスで里華ちゃんと組みたいって言ってくれるようになるから、ダブルス覚えようってなって、ダブルスのテクニックとかノウハウを教えてくれて。

辻先生)おお。

藤原さん)そうやってダブルスが自信持てるようになると、強い選手に勝てるようになって。で、私に負けた選手が、「里華次組もうよ」って、海外の選手も日本の選手もみんなが練習しようって声かけてくれるようになって、嬉しい、楽しいって思い始めてて。しかも、私の中に「この人と話していいのかなぁ」って人を選んでしまう癖がついていて、コーチは英語を覚えるために日本人とつるむなって言ってたので、当時は日本人の先輩とうまく付き合えていなかったんですけど、母親が誰とでもわけへだてなく楽しく話してくれて。母親は、私が話しかけづらい先輩にも、おにぎり作ったから食べなよ、って分けてあげたりとか、みんなに優しく接していたので、私より母親が「みっちゃんみっちゃん」って呼ばれて。みんなやっぱり寂しいから、「みっちゃんみっちゃん」って甘えるようになって、誰とでも分け隔てなく仲良くしてくっていう空気を作ってくれて、そのおかげで私もみんなと仲良くなることができて、ツアーに居場所ができて、ツアーが楽しくなって…

辻先生)お母さんのおかげやな。

藤原さん)ほんとそうですね。母は今も現役のテニスコーチなんですけど、やっぱり生徒さんがすごく集まってきてくれて。

辻先生)素晴らしいお母様。

藤原さん)一般の方々にも、私と同じようにダブルスを厳しく教えるんですよ。ダブルスって夫婦生活と一緒で、自分が自立してパートナーを心配できることが大事で、自分が自分のことをできないと、パートナーの足を引っ張っちゃうので、まず自分がしっかり仕事してパートナーを支えていくんだって、一般の方にも同じように教えるので。テニスの指導者がすごく習いにくるんですよね。

辻先生)人生にも通じてるしね。何年くらいお母様と一緒に回ってたの?

藤原さん)1999年から、2006年に手術するぐらいまでですね。

辻先生)7年くらいか。

藤原さん)はい。自分が一番ランキング高くなるまで。

辻先生)いい話だ。

藤原さん)支えてもらいました。

辻先生)ありがとうございます。ジュニアの育成とか教育に関して、課題感や物申したいことはなにかありますか?

藤原さん)全国でいろんな指導者を見て、テクニックを教えてくれる指導者は多いんじゃないかなって思うんですね。もちろんテクニックなしでは勝てるようにはならないし、テクニックもとても大切なんですけど、友達を大切にすることだったり、友達から学ぶことだったり、チームに恵まれることだったり、この人と組みたい、この人とチームになりたい、この人と一緒にやりたいって思われることだったりっていうのもすごく大切なんじゃないかなと思っていて。

辻先生)人間的魅力だからなあ。

藤原さん)はい。なので、こんな風になりたいと思われるためには、マナーとか当たり前のルールを守ることだったり、相手を尊重することだったりが必要だし、それができてなおかつ競技者として高めていくことの大切さ、人と比べるよりも自分自身と向き合うことを伝えていきたいなと思います。

辻先生)ライフスキルだよね。

藤原さん)はい、そうですね。指導者として頑張ってもらいたいと思うと、どうしてもバランスを崩すときもあると思うんですけど、やっぱり自分自身がそれで苦しんだからこそ、みんなで協力してチェックし合えるような、指導者の中での連携があるといいなと思います。

私自身は、テニスに限らずどのスポーツも素晴らしいと思ってるんですよ。サッカーも好きだしアイススケートも好きだし、今の子どもたちにも、どのスポーツも経験してもらえたらと思って。団体スポーツの良さ、個人競技の良さ、ウィンタースポーツの良さ、サマースポーツの良さなど、さまざまあると思うので、いろんなものに触れながら育まれることが大きいなと思っていて、これだけがいいと思ってほしくないと思って。

辻先生)そうだね。いつかはDispoでご機嫌大運動会をやりたいなって思ってて。

藤原さん)やばいですね。

辻先生)心って難しいし、ライフスキルも奥深いし、非認知的な脳みそをどうやって育んでいくかっていうのはほんとに一筋縄にはいかない問題なんだけど、Dispoではごきげんというキーワードを掲げていて。いろんな経験をされている藤原里華さんにとって、ご機嫌っていう言葉はどのように響きましたか?

藤原さん)辻先生からご機嫌っていうワードを伺った時に、そのワードがしっくりくるなって本当に思いました。やっぱり、めぐりめぐってご機嫌でい続けることの難しさっていうのがわかりますし。特に、勝負の世界で生きていると「ご機嫌?!ご機嫌じゃなくて勝ちたいんだよ」みたいな空気がありますが、でも勝ち続けるってご機嫌で居続けることだと思っていて。

辻先生)そうだね。その通りだよ。

藤原さん)私は世界ランキングが超健康ランキングだと思ってるんですね。

辻先生)まじ。いいねそれ。

藤原さん)特にテニスの場合は、ツアーが長いですし、1年間通しての勝ち続けたポイントがランキングに反映されて、平均的にポイントを積み重ねられるって事は、強い敵と戦い続けても倒れない、病気にならない、大きな怪我を負わないってことだと思っていて。私は怪我が多くて、それが1番難しかったんですね。やっぱり、そういった事は小さな頃からの食生活や睡眠といった体作りが影響していると思うんですけど、日本って結構それが疎かにされているなと思ってて。体を作ることが中心の生活ではなくて、受験とか、乗り越えなければいけない試験が多すぎたり、ジュニアの大会も多すぎて、練習時間が夜遅くなって、毎日睡眠不足だったりするので、日本のランキングは、怪我が溜まった上でなんとか耐え抜いた選手権だと思うんですよね。

辻先生)耐え抜いた選手権なんだよね。健康選手権じゃないんだね。

藤原さん)そう。だから、日本でプロになる子達は、ご機嫌のままプロになるのが難しくて、プロになる時点で不機嫌だしいっぱいいっぱいだなって。でも、本当に環境づくりをしてそこを変えていかないと、日本から世界チャンピオンが生まれないかな。

辻先生)なるほど。世界で活躍している女子のテニス選手でご機嫌な人はいますか?

藤原さん)海外の世界チャンピオンになる人は大体ご機嫌ですね。やっぱりジュニア時代をしっかりとコントロールして過ごしてますね。ジュニアの大会には出ないようにして、まずは体作りに注力したりとか。特にウィリアムズシスターズって呼ばれている選手たちは、ジュニアの世界大会に出てないで、実力があるってことでワイルドカードっていう主催者推薦枠をもらって大人の大会に出場していて、そこで勝ってポイントをもらえる状態を作っていて。それは特別かもしれないですけど、日本人はどうしてもポイントを追いかけてしまうんですね。子供の頃から。プロになって強くなってる人たちが前例でそうしてるからそうしなきゃいけないと思いすぎちゃって、ジュニアなのにテーピングぐるぐるで必死に海外遠征も回ったりして。

辻先生)あぁ。疲れ切ってるね。心身ともに。

藤原さん)そうなんですよ。ご両親も必死だし、指導者が言ってることを信じるから、指導者レベルで変えていくしかないなと。

辻先生)そうだね。今はもうプレイヤーから引退している立場で、自分がご機嫌でいるために何か大切にしていることはありますか?

藤原さん)できるだけ気持ちいい言葉を使うようにしたりとか、そういった言葉を大切にしている人と一緒に時間を過ごすようにしたりとか、ご機嫌でいられる職場を選んだりとか、環境を整えるようにしたりとか。スケジュールを詰め込みすぎず、疲れすぎないようにしたりとか。あとは、自分で今ご機嫌かなって確認したりとか。

辻先生)そうだね。気づくことだね。

藤原さん)そういったところをチェックするようにしています。

辻先生)なるほど素晴らしい。いい話ありがとうございます。質問はあと2つね。Dispoアスリートの印象と、Dispoの活動に対する想いを話してもらえるとうれしい。

藤原さん)他の競技の方やオリンピアンとお話しさせていただいたときに、ご機嫌というか明るい方が多いなって印象を受けました。ナショナルトレーニングセンターとかに行っても、上まで行ってるアスリートって自分と向き合っていて、細かいことを気にしている場合じゃないから、明るい人が多いんですね。後ろ向きじゃないというか。そのエネルギーを真っ先に感じました。自分が競技から遠ざかって、そういった仲間といれる機会も減っていますし、そういう仲間と意見交換できる場っていうのは、これからますます貴重になるなと思って。特に、今自分が幼児スポーツ教育に携わり始めて、第一線で戦ってきて第一線の世界を見てきた方たちと一緒に何かができるっていうのは、ワクワクしかないです。強い思いを持ってやってきた人たちなので、現状の課題を変えるアクションを起こせる人たちだと思いますし、そういった方たちと一緒に、より良い世界にしていくために子どもたちにお話できる機会が持てるのは素晴らしいなと思っています。

辻先生)ありがとうございます。最後に、藤原里華さんのビジョンを聞かせてもらえますか?

藤原さん)そうですね。私自身、世界で本当のトップ選手を見てきて、面白い尖った人間が多いなと思っていて。尖ってるからって決してバランスを崩しているということではなくて、もうすごく人間的にも優秀だし知的だし、だけど明るくて面白くて周りを引きこむチャーミングな人間が多いなと思っていて。そういった、自分を持ちつつ、空気を読まないんだけど空気を作っていく、クリエイトしていく人間が、もっともっと日本から出ていく空気感を作りたいなと思っていて。

辻先生)なるほど。

藤原さん)そういった人間が生まれやすい環境を作れるのは、やっぱり大人だと思うので。自分の意見を持つことだったり、他人の違う意見や違う文化を学んで受け入れたりするところが、日本はまだまだ遅れていると思うので、そういったところを海外の国から学んだり、そして日本の良さを知った上で海外で勝負して日本の良さをアピールできる人間を育んでいきたいなっていうビジョンがあります。

辻先生)なるほど。それはテニスで?

藤原さん)テニスでできたらいいですけど、テニスに限ってないです。私もテニスは素晴らしいスポーツだと思いますし、テニスをやったからこそそういった視点が持てましたけど、テニスに限った話ではないですし、スポーツで超健康になってもらいたいと思うので。

辻先生)そうだね。

藤原さん)はい。そこはテニスを生かしつつ、Dispoで他のスポーツの方とも学び合って、スポーツ自体の素晴らしさを伝えていきたいなと思ってます。

辻先生)ありがとうございます。この活動は長く続いていくことが大きなビジョンなので、一瞬で今の社会課題を解決できるわけじゃなく、みんなの力を合わせながら前に進みたいと思うので、これからも引き続きよろしくお願いします。

藤原さん)こちらこそよろしくお願いします。