中村敏英 (ナカムラ トシヒデ)

アメリカンフットボール

プロフィール

1973年生まれ 東京都江戸川区出身
日本大学の附属中学からアメリカンフットボールを始め、日大卒業後はXリーグのオンワードオークス、リクルートシーガルズ(現オービックシーガルズ)でプレー。2002年Xリーグ優勝、2005年全日本選手権優勝。2004年にはアメリカAF2リーグに参戦し、メンフィスエクスプローラーズにてプレー。
2006年引退後はオービックシーガルズでコーチとなり、2010~2013年は全日本選手権史上初の4連覇を達成。2017~2019年までは関西大学に在籍し、ヘッドコーチを経験。2020年東京大学コーチ。
2014、2018年大学世界選手権日本代表コーチ。

<好きな食べ物>

1.うなぎ

2.そば

3.すし

<ご機嫌の価値>

1.自分も周りも前向きになれる

2.あらゆるものに感謝できる

3.セルフイメージが大きくなる

<関連情報>

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インタビュー

辻先生) じゃあ今日は中村敏英さんをインタビューしたいなと思います。1個目の質問は、アメリカンフットボールの魅力、楽しみ、そこら辺をちょっと語っていただけるとうれしいです。

中村さん) もう一言で言うとですね、全ての要素がゲームの中に詰まっているということだと思います。例えば、格闘技としての激しさだとかという部分もあれば、私はレシーバーでボールを取る人間なので、球技としてのスキルというのを高めてどう発揮するかということもあれば、分業で一人一人の役割が、かなり別々に確立してるので、あらゆる人たちが1つのチームを作ってくということも。あとは何より60回サッカーのセットプレイをしているようなゲームをやるんですけど、戦略とか、相手を分析して試合前に準備していくんですけど、それがもうばっちりハマった時に喜びもあります。

辻先生) ラグビーの魅力を聞くと、同じようなことを言ったりしていくんですが。

中村さん) そうですね。事実として、例えば昔、京都大学が連覇してたとかいうこともあって、セットプレイでその都度、作戦会議をして、流動性が無い分、やはり事前に準備したことが仕掛けやすかったりとか、転回しやすいていうのがあるんですね。

辻先生) それはそうね。PDCAサイクルが回されてる感じなんですか?

中村さん) そうです。アメフトだと、試合会場の1番上の所から、スポッターと呼ばれる、コーチがずっと見ながら、そこで5秒くらいで次のプレイを決めるんですけど、それを残りプラス5秒くらいでサイドラインに伝え、フィールドの中に伝えて、残り20秒くらいでフィールドの中で合意を作って、プレイをしていきます。

辻先生) 上からの戦略Aがやってきたけど、みんなでハドルしてクオーターバックCの方が良いんじゃないの?みたいなことはあるの?

中村さん) あります。そういう場面をどれだけ想定して、どれだけの選択肢をフィールドのの選手に与えていくかということも含めて準備ですし。だからもう本当に準備8割、9割のゲームだと思います。

辻先生) そうだよね。

中村さん) はい。なので、国立大学が強かったりですね。やはり頭の良い大学は1部にいるんですね。

辻先生) 東大がね。

中村さん) はい。戦略をしっかり整理して、ゲームに挑めると意外とフィジカルで負けてる相手にも良い勝負はできるんですよ。

辻先生) なるほど。そうか。20年くらい前、東大がね、僕は関わったことないんだけど、東海大学のチームに勝った時のテレビ番組があって、あれ、よく僕見てるわ。戦略のソースですね。

中村さん) そうですね。それがセットプレイなので、ある一定の状態の中で相手を想定できますし、こちらも準備ができるという。例えばラグビーでいうと、カオスな状態とよく言われてますけど、カオスじゃない状態で、プレイできるていうのが1つ特性だと思います。

辻先生) 将棋やってる感じでもあるよね。なんか。

中村さん) あ、そうですね。今、私は指導者になりましたけども、そこが楽しくて仕方ないというかですね、寝れない日々は続きますけど、試合でそのプレイが決まった時は、全て吹っ飛びますね。

辻先生) なるほど。知的スポーツだなて確かに思いますね。中村くんは子供の頃は、どんな子供だったの?

中村さん) 非常にやんちゃで、わんぱくで、机の前にいるよりも外での遊び、鬼ごっこしたり、缶蹴りしたりとか。

辻先生) スポーツはどうだったんですか?

中村さん) 得意な方だったんですが、中学を受験する事になって、実はのめり込んだ経験がなかったです。その反動か、中学に入った時には、もう部活を思いっきりやりたいと。本当はラグビーをやりたいと思ってたんです。国立競技場で雪の中、早稲田と明治の試合でスクラムの湯気が濛々と出てる。これは男のスポーツだなと思いましてやりたかったんですけど、入ったのが日大の付属でですね。日大といえば、当時アメリカンフットボールが強くて、やるからには大学までやりたいって考えていたので、中学校の時から赤いユニフォームに憧れてアメリカンフットボールを始めました。

辻先生) 日大は、中学校にアメフト部があるんですね。

中村さん) はい。全国に3校か5校くらいしか無かったんですけど、今も本当に強い関西学院の中等部ていうのがあって、関東にも2.3校あってというそんな状況でした。

辻先生) あれだけ色んなポジションが分かれていて、自分のポジションをどう選ぶようになるんですか?選ばされるんですか?

中村さん) スタートの時は、先輩にお前これやれということで決められたということと、オンフィールドが11人なんで、11人以上いれば、無理矢理はめこんでですね。オフェンスもディフェンスも全部やるていう。

辻先生) あなたはどうだったんですか?中学校の頃はなんでもやってたの?

中村さん) 中学校の時、主にはボールを触るポジションですね。オフェンスの。あとはディフェンスのパスをカバーするとか。ディフェンスバックというんですけど。

辻先生) なるほど。最終的にそのワイドレシーバーというポジションは、いつ確定されたんですか?

中村さん) それはもう大学の4年生の時に転向して、そこで初めて大ハマりしたポジションだと思います。今思えば。

辻先生) あぁそう。ワイドレシーバーのポジションの面白さは?

中村さん) 自分が大学で試合に出るには、何をしたら良いのかを考えた時に、レシーバーというポジションにチャンスがあるなと考えたので、そこに自分から食らいついていったていうのが1つ。きっかけとしてはそうだったんですけど、今思えば、自分に球が飛んでくるていうことは、1回も無いみたいな日もあれば、10回飛んでくる日もあって、いつくるかわからないんですけど、狙い通りに自分がフリーになって、クオーターバックという投げる選手と意思疎通で球が通った時、爽快な気持ちになったのっていうのがありました。

辻先生) アメフトは比較的複雑だけど、戦略が渦巻いているスポーツの中で、メンタルはポジションによっても違うと思うんだけど、揺らがずとらわれず自然体でやる、子供にはわかりやすくご機嫌でやろうぜというようなキーワードになってるんだけど、アメフトに必要なメンタリティていうのはどんな感じでしょうか?

中村さん) 1つは、私がやってたポジションの特性として、ラグビーボールより少し小さいんですけど、皮の塊が思いっきり投げられたスピードで飛んでくるんですね。で、周りには高いボールでくるものも、脇を空けた状態で中に入って取らないといけないので、もう取る側から、脇腹にヒットを食うとか、そんなような恐怖心もある中で、それに打ち勝って、ボールにだけ集中しないといけない。やはり心が整っていないということが1つ目にあります。あとは、60プレイを分析するとですね、4.6秒の全力運動と23秒のインターバルの繰り返しなんですね。ですので、前のプレイを引きずっていたら、次良いプレイできないですし、まだ起きない未来の事を考えていてもいま全力でやるしか良い結果は出てこないので、そういうゲームの要素としても、心をどう整えていくのかというのが重要だと思います。

辻先生) そうだね。逆に心がうまく整えられずに失敗しちゃってた時期とか、例みたいなものはいつ頃の話?

中村さん) 大学時代もそうでした。(大学時代の)最後の試合もここまでやったらという気持ちでどういう結果になっても心とらわれなかったんですけど、ただ、ずっと目標にしてた日本一になれなくて、社会人でもプレイを続けようと思い、私自身サイズは小さいプレイヤーだったので、人一倍練習しなきゃということで、社会人になってからも打ち込んだんですけど、自分に期待をかければかけるほど、まだ起きてないことなんだけど、ここは成功させなきゃとか、ミスできないぞとか、

辻先生) あぁ。認知の暴走だね。

中村さん) はい。とても簡単なプレイもミスしてしまったりとか、ミスした後に何でだろうということで練習して追い込んで、イップスみたいな状態に。

辻先生)  中村くん真面目だから、余計にそうなりがちだな。

中村さん) 社会人の強豪のチームにいたんですけど、当時チームで1番練習してたと、自負はあるんですけども、結果が全く伴わらなかったですね。

辻先生) 人間ってうまくいかないから自分を見つめて、何足りないんだろうって、心の存在とか、そこの大事さに気づける。順調満帆なときって、気づきにくいからね。それはそれで1つの、本人は苦しいかもだけど、糧ではあるね。

中村さん) 今思えば。苦しんでるプレイヤーに、どういう理解をしてあげるか、声かけてあげるかていうところで、良い経験だったと思います。

辻先生) そうだね。教育の話をしたいんだけど、今お子さんは何歳ですか?

中村さん) 10歳の男の子と8歳の女の子の双子がおります。

辻先生) 世の中の教育に関して、感じたり思ったり、課題だったりどう感じてますか?

中村さん) そうですね。辻先生の影響が大きいので、似たようなことを言ってしまうんですけど、やはり詰め込みが多いなと思いますし、あとは答えが決まってることを解答に導くみたいなことが多いと思っていて。やっぱり今、複雑な世の中で、答えは誰もわからないみたいな問題多いと思いますし、またその時自分の周辺の人がどんなメンバーでどんな環境で、どんな事に当たるかということも、全く同じ環境は無いと思うんですね。

辻先生) そうだね。

中村さん) そうなると、特に自分はスポーツに関わってるので、スポーツの体験が、人生の局面でも再現性を出せるような体験をさせてあげたいなと思ってですね。ただ勝った負けたというかよりは、その時どのように向かったのかとか、そこで、何を学んだのかとか、ということを大事にしてほしいなって思ってます。

辻先生) 具体的には、小中の部活とか、学校の授業とか、他の親御さんを見て、僕らが思ってるようなごきげんではないできごとが起こってると肌で感じますか?

中村さん) そうですね。自分の子供のスポーツの関係で聞こえてくるようなこともあると思いますし、大学の指導をしている中で、周辺の大人がどちらかというと、考えさせることよりもこの場面ではこうあるべきだろということでされてしまってるケースというのが、とてもよく目にします。

辻先生) 確かに戦略を考える東京大学は、得意だろうけど、意外に答えの無いことを考えて発想していくということが東京大学は苦手な可能性もあるもんね。

中村さん) そうです。これまで指導してきたチームどこでもある話なので。どこのチームに限った話ではないですが、比率として多い傾向があったり少ない傾向があったりあると思います。みんな状況分析はできるんですね。で、こうじゃなかったかとか、言うんですけど、振り返ったらわかるけど、目の前で何が起きるかわからない時に、どうやったら良かったかみたいな話がすごく抜けがちだと思うんですね。

辻先生) そうだね。それこそ人生だからね。今何するべきなのか誰も教えてくれないわけだよね。でも、何かを選ばなきゃいけない、決断しなければ行けない、判断しなければいけないからね。

中村さん) はい。

辻先生) まさにそう。

中村さん) 自分で考えて、自分で行動して、その結果に責任を持って振り返ってそこから何を学ぶか、どれだけ数を経験したかどうかが、スポーツの後の人生を豊かにできるかに関わると思います。それを指導者として、1番気にしています。

辻先生) 素晴らしい。ご機嫌っていう言葉を中村くんはどのようなイメージを持たれましたか?

中村さん) 1つは、心がとらわれない状態になれると思ってます。過去とか未来とかでなく、今の自分が成長に向かっていないといけないと思うので、ご機嫌でいないと余計なものにすぐとらわれてしまうんだろうなと思います。もう1つは、ご機嫌なほうが周りの人も明るくなるし、応援もしてくれるし、応援してくれている状態のほうが、必ず良いイメージを持ちながら進められると思うので。

辻先生) その通り。人生も1人では何事も成せないからね。絶対にご機嫌でいた方が自分にも良いし、周りにも応援されるのも間違いないよね。不機嫌でいたい人はいないからね。

中村さん) はい。本当にそう思います。

辻先生) dispoに参加している仲間たちの印象、アスリートの印象どんな感じ?

中村さん) 1番感じたのは、自分の競技のことだけとか、自分の成績だけではなくて、世の中がどうなったら良いかとか、自分の競技以外の人のためにこうしたらもっとよくなるよねとか、そういうことに視野を持っている方が圧倒的に多いなと思いました。

辻先生) そうだね。視野が広いね。この活動全体に対して、なんとなく今の印象、思い、みたいなものをいただけますか?

中村さん) まだ実際、自分はあまり参加してないので、これまでリリースされているものの情報にはなるんですけれども、やっぱりアスリートが1番伝えやすい事、ご機嫌とか、非認知とかということだと思っていて。なぜなら、スポーツを見て、オリンピックのあのシーン感動したとかっていう当事者の方が多いので、その方々の感動シーンを目の当たりにしてる人たちが、ご機嫌とか非認知を伝えていくっていうのは、1番影響力が高いんだろうなと思っています。それこそ学者の先生とかではなくて。ビジュアライズされやすいというか。その場にいた方が「あのシーンのことですね」というのって、すごく伝えるには武器だと思ってます。

辻先生) 感動とか、定量化できない部分で動いて、周りにそれを与えてる人達のメッセージだからこそ伝わりやすいというのは、改めて今感じたけど、そういうことかな。

中村さん) 本当にそう思います。はい。

辻先生) 子供たちも大人もやっぱりそれを感じやすいね。最後の質問なんだけど、これからの中村くんのビジョン、どんなことを今思われているんですか?

中村さん) 1つは、競技にまだ関係している者として、どれだけ多くの良い男を世の中に排出できるかということをやりたいですね。合わせて、競技全体、アメリカンフットボールという競技世界が、もっとより高いところにいけるように貢献はしていきたいなと思ってます。で、もう1つ、仕事としては、自分で会社を経営していて、人材関係の仕事をしているんですけど、スポーツで培ったチームビルディングとか、メンタルとかをスポーツ外の人たちに伝えていけるようなことをやっていきたいなと。

辻先生) なるほどね。

中村さん) それによって、スポーツの価値をもっとより一般方々に、その活動を持って伝えていきたいというのがあります。

辻先生) そのビジネス界というか、社会というか、市場というかが、スポーツ界の方も、もちろん悪いところがあって、気合と根性だけでやりがちな世界でもあって、未だにハラスメントとかいっぱい起こっちゃってる残念なところもあるんだけど。その社会から見た人たちが、我々が考えているような価値を感じ取ってると思いますか?それともまだまだ感じ取ってくれてないと思いますか?

中村さん) それこそ廣瀬さんや、ラグビー界の方、本当にすごく頑張られて、中竹さん然りですけども、あとは青学の原さんとかですかね。ラグビーだと、岩出さんとか、影響力ある方々が、今の時代に即したやり方とか、学生を成長させて、成果を出している、かなり世の中に広まってるのではないかと。そういうことが大事だとは、みんな気づいてるんですけど、実際のその方々の運営の中で、どうしたら良いかていうところが、まだHowのところが伝わってない思いますので、そこに、自分が貢献していけたらと思ってます。

辻先生) はい。ぜひそこはお願いしますね。ということで、またいっぱい話したいんだけど、とりあえず今日はここまでで。ありがとうございました。

中村さん) これからもよろしくお願いいたします。

辻先生) はい、こちらこそ。よろしくね。

中村さん) ありがとうございます。